ラストサマー


時間通りに目を覚ました僕はゆっくりとベットから降りて服を着替える。
念のため電気はつけない。開け放された窓から射す月明かりを頼りに準備を整える。
窓からふきこむ天使の寝息のような微風が、汗で湿った地肌をやさしくすべる。
ときおり寝ぼけたセミが思い出したかのようにジリジリと乾いた鳴き声を放つ。
用意しておいたバックパックを背負い、ベルトを締めなおし、クローゼットと机の引き出しから武器を取り出す。これが僕の命を守る最後の砦。
ベットの上に武器を揃え手製の鉢巻を締めた。
僕は世界にただ独り残された最後のヘイシ。
味方はいない。あらゆる支援は望めない。まったく絶望的だ。
しかし僕は逃げられない。
この街から逃げ出すことはすなわち死を意味する。
ならば僕は戦う。
そして僕の
たった独りの戦争が始まる。
僕は死に、世界は闇に沈む。



自転車にまたがり、ゆっくりとペダルを漕ぎ出す。
最後の戦いに向かうべく……。